パソコンやオフィス家具、工具などを購入したとき、「経費にできるのはいつ?」と迷ったことはありませんか。実はこうした資産は、金額によって経費にできるタイミングが変わります。今回は、その中でも特に節税効果の高い「少額減価償却資産の特例」について、基本からわかりやすく解説します。
そもそも減価償却とは
10万円以上の備品や設備を購入した場合、原則としてその年に全額を経費にすることはできません。パソコンなら4年、応接セットなら8年など、資産ごとに決められた「法定耐用年数」に応じて、毎年少しずつ経費に計上していきます。これが「減価償却」です。
たとえば40万円のパソコンを購入した場合、耐用年数4年で毎年10万円ずつ経費にしていく、というイメージです。
少額減価償却資産の特例とは
この原則には例外があります。それが「少額減価償却資産の特例」です。
青色申告をしている中小企業や個人事業主が、一定額未満の減価償却資産を取得した場合、耐用年数にかかわらず取得した年に全額を経費(必要経費・損金)にできるという制度です。
利益が出ている年に対象資産をまとめて経費化することで、その年の所得を圧縮し、節税につなげることができます。
対象となる資産と金額の基準
2026年4月1日以降に取得する資産については、取得価額40万円未満が対象です(2026年3月31日までに取得した資産は30万円未満が基準でした)。
対象となるのは、パソコン、複合機、応接セットや事務机などの什器備品、業務用の工具・器具といった、いわゆる固定資産全般です。ソフトウェアなど無形固定資産も対象に含まれます。
なお、対象となるのは以下の事業者です。
- 青色申告をしている中小企業者等(従業員数400人以下など一定の要件を満たす法人)
- 青色申告をしている個人事業主
白色申告の場合はこの特例を使えないため、注意が必要です。
年間300万円という上限がある
この特例には「1事業年度あたり合計300万円まで」という上限があります。
たとえば39万円の資産を10個購入すると合計390万円になりますが、特例が使えるのは300万円分までで、残りの90万円分は通常の減価償却が必要です。
また、事業年度が1年に満たない場合は、次の計算式で上限額を調整します。
300万円 ÷ 12 × 事業を営んだ月数(端数は1か月に切り上げ)
たとえば開業から6か月であれば、上限は150万円です。
通常の減価償却との使い分け
少額減価償却資産の特例を使うかどうかは、事業者が任意に選べます。40万円未満の資産であっても、あえて通常の減価償却で複数年にわたって経費化することも可能です。
- その年の利益が大きく、税負担を抑えたい → 特例を使って一括経費化
- その年は赤字・少額の利益で、将来の年度に経費を残しておきたい → 通常の減価償却を選択
このように、事業の状況に応じて選択するのがポイントです。
仕訳の注意点
特例を適用して経費計上した資産も、固定資産としての管理自体は必要です。「少額減価償却資産の特例を適用した」ことがわかるよう、固定資産台帳への記載を忘れないようにしましょう。また、資産の種類によっては固定資産税(償却資産税)の申告対象になる場合もあるため、あわせて確認が必要です。
まとめ
- 少額減価償却資産の特例は、40万円未満(2026年3月31日までの取得分は30万円未満)の資産を取得年に全額経費化できる制度
- 対象は青色申告をしている中小企業者等・個人事業主
- 年間上限は300万円
- 特例を使うか通常の減価償却にするかは任意選択
設備投資のタイミングや金額を工夫することで、税負担をコントロールできる制度です。購入を検討している資産があれば、この特例の対象になるかどうか、一度確認してみてください。
執筆者:吉川